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- 2025.1.31
- GX解説
米国で「トランプ2.0」が始動-GXへの影響とは?
今月20日に米国でトランプ大統領の就任式が行われました。通算2期目となるトランプ政権。就任してからすぐに気候変動に関する国際的な枠組みであるパリ協定からの離脱を国連に通知するなど、公約通りの動きを見せています。中国に次いで温室効果ガス排出量が世界第2位である米国の離脱が世界のサステナビリティ推進に影響を及ぼすことは必至です。
その影響がどのくらいのものになるかはこれからの動向を注視していくしかありませんが、IGESが今月公開したレポート(※1)およびスライド(※2)を見てみると、トランプ大統領が言っていることが全てそのまま実現するわけではなさそうです。
その主な要因としてあげられているものは以下の通りです。
・ バイデン政権の気候変動政策(インフレ抑制法など)を覆すのは容易ではない
→ 連邦議会の両院ともに共和党が優勢だがその差は僅差
→ ベネフィットを享受しているのは共和党を支持する地域が多い
→ 法律や規制を変えるには多大な労力と時間を要する
・ 主要経済政策(関税、入国制限、強制送還など)によりサプライチェーンが混乱し、経済が停滞する
・ 化石燃料の増産を謳うが市場価格に影響するため言うほど実現できないのではないか
・ AIやデータセンターなどへの電力供給は市場競争力のある再エネの方が適している
・ 「トランプ1.0」時代と同様に地方政府や企業が単独または連合体としてこれからも気候変動対策に取り組むことをアピール
レポートの中で特に気になったのは、今月13日に最高裁から出された以下の判決です。気候関連の大規模災害が相次いでいる米国で化石燃料の生産者であり続けることは、訴訟リスクが常について回るということかと。そうした中で本当に化石燃料を増産することはできるのでしょうか。
最高裁は「化石燃料生産者が自社製品の危険性について国民に故意に嘘をついたとして、洪水、山火事、その他の気候への影響に対する賠償金を負担すべきだというホノルル当局の主張を推し進めた2023年のハワイ州最高裁の判決を再考することを拒否した」。(The Court “declined to reconsider a 2023 Hawaii Supreme Court ruling that advanced claims from Honolulu officials that fossil fuel producers knowingly lied to the public about the danger of their products and should help foot the bill for flooding, wildfires and other climate impacts.”)
今回参照したレポ―トなどではより多角的な視点から分析が行われています。詳しく知りたい方は、是非一度お目通しください。
(2/5 追記)
※1の文献の日本語版が公開されました。以下のURLを追記しています。
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※1 Mark Elder, Eric Zusman, Matthew Hengesbaugh, “Why the Second Trump Administration Could Struggle to Undermine Domestic Climate Policies: Obstables to Backsliding”, January 2025, IGES Briefing Note.(https://www.iges.or.jp/jp/pub/trump2/en)
※1の日本語版:「第2次トランプ政権が国内気候政策を後退させるのに苦戦する理由とは:立ちはだかる障壁」(https://www.iges.or.jp/jp/pub/trump2-j/ja?__CAMVID=UQChgTHYDF&_c_d=1&uns_flg=1&__urlmid=10805419&__CAMSID=LQcHgTHYDF-61&__CAMCID=rbbnLexMsO-033&adtype=mail)
※2 田村 堅太郎「『トランプ2.0』: 米国の気候・エネルギー政策と 国際社会に与える影響」, 2025年1月20日, 日本記者クラブでの講演資料. (https://www.iges.or.jp/jp/pub/trump2-impact-climate-and-energy-policy/ja) 日本記者クラブのYoutubeで田村氏の講演を聞くことができます。(https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/36879/report)