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- 2025.1.23
- GX入門
気候変動の影響によるリスクに備える
世界の平均気温は年々上昇を続けており、気候変動による影響が懸念されます。
まずは、気候変動により発生するリスクに備えておくことが、事業継続のために必要です。
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)でも、自社の気候関連リスク・機会を評価し、経営戦略・リスク管理へ反映し、その財務上の影響を把握、開示することを求めています。
リスク管理
まずはリスク管理について。
リスク管理とは想定されるリスクを洗い出し、それにより発生しうる損失を可能な限り最小限に抑えるために予防的な施策を講じることです。
リスク対応策としては、リスクそのものを取り除く(回避)、被害を低減する(軽減)、保険などに加入し影響を別のものに移す(転嫁)、リスクそのものを受け入れる(受容)などがあります。
また、リスク管理と同様に危機管理も非常に重要です。
危機管理とは、実際に損害が発生した場合に、被害を最小限に抑えるための施策をあらかじめ決めておくことです。
インシデント発生時の対応をマニュアル化したり、訓練を行ったりといった対応策などがあります。
気候変動による影響を想定する(リスクの洗い出し)
リスク管理を行う上でまず必要なのは、気候変動によりどのようなリスク・危機が発生しうるのか想定することです。
いくら備えても想定外の事態は必ず発生しますので100%ということはありませんが、可能な限り洗い出しておくことで、影響を最小限に抑えることができます。
TCFDでは気候関連のリスクを「物理的なリスク」と「移行リスク」にわけて定義しています。
まず比較的わかりやすい「物理的なリスク」ですが、さらに「急性的なリスク」と「慢性的なリスク」の2つにわけられています。
「急性的なリスク」は、台風の大型化などによる大雨、洪水、高潮、土砂災害、強風被害、逆に雨が降らないことによる干ばつ、水不足、山火事、大雪などによる交通遮断、家屋損壊などがあげられます。
「慢性的なリスク」は気温上昇による熱中症、日中の屋外作業の制限、植生や漁場の変動、永久凍土の溶解による海面上昇、未知のウィルスの蔓延などがあげられます。
次に「移行リスク」ですが、こちらは「政策・法規制リスク」「技術リスク」「市場リスク」「評判リスク」の4つに分けられています。
「政策・法規制リスク」は、炭素税などの温室効果ガス排出に関する規制の強化による財務的な影響や、情報開示義務化の拡大などに伴う負担増、また法規制に対応できない場合は訴訟などのリスクも考えられます。
「技術リスク」は、技術進歩・イノベーションの波に、既存製品が乗り遅れてしまうリスクです。また逆に、新規技術への投資失敗なども想定されます。
「市場リスク」は、消費者行動の変化による需要の変化、またそれに伴うコストの変動などがあげられます。
「評判リスク」は、低炭素への移行についていけない場合、市場からの評価・評判が低下する、もっとすすめば非難を浴びる、訴えられるなどといったことが想定されます。
リスク対応策を検討する
リスク項目を洗い出したら、個々のリスク項目について対応策を検討します。
「物理的なリスク」については回避することは難しいものがほとんどですので、被害が発生しないように施設の強化を図るような軽減策、保険に加入し万が一に備える転嫁策、受容したうえでインシデント発生時に備える危機管理対応などが対応策になります。
「移行リスク」については各々の業種や扱っている製品などにより、対応策は様々検討できるかと思います。
対応策を検討したうえで影響度・発生確率・財務インパクトなどを考慮した優先順位を設定し、最終的な対応要否について決定する必要があります。
まとめ
「備えあれば憂いなし」などと言いますが、近年の気候変動による影響は想定外で、リスク項目も非常に広範囲に及びます。
また平均気温などの状況変化やテクノロジーの進歩などにより、リスクとして想定される項目や対応策も日々変化していきます。
いったんリスクに備えたからOKというものではなく、定期的に見直し、漏れているリスク項目はないか、リスク対応が適切に実施できているか、対応策の見直しは必要ないかなどなど、確実に管理していくことが重要です。