世界でカーボンニュートラル包囲網が形成されたのは、気候変動問題が経済安全保障の観点から重視されるとともに、各国の成長戦略として位置づけられたためです。その背景には、サステナビリティを考慮に入れた資金フローの変化があります。投資を化石燃料から撤退し、クリーンエネルギーに振り向けるという動きが加速しています。

気候変動問題は、長年、世界の政治経済のリーダー達にとって最大のリスク要因と目されてきました。1 そうしたリスクへの対応策としてESG投資2が進展し、気候変動の原因である温室効果ガス(GHG)3を大量に排出するような事業からは投資を撤退する一方で、GHGの排出削減に貢献するような事業に投資が振り向けられています。事実、クリーンエネルギー移行に対する世界の投資額は急激に伸びており、2022年には過去最大額(当時)に達し、初めて化石燃料への投資額と並びました。4

そうした潮流を踏まえ、各国政府はカーボンニュートラルを成長戦略と捉え、巨額投資を実現する方針を示しました。例えば、EUは欧州グリーンディール関連で、今後10年間で官民合わせて1兆ユーロ(約140兆円)の投資5を、日本はGX政策として今後10年間で官民合わせて150兆円超の投資6を目指すとしています。カーボンニュートラルに向けた取り組みの成否が、企業間・国家間の競争力に直結するようになっています。

  1. 世界経済フォーラム.“第18回グローバルリスク報告書2023年版”. 2023年1月11日.https://www3.weforum.org/docs/WEF_Global_Risks_Report_2023_JP.pdf.
  2. ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治/ガバナンス(Governance)を考慮した投資活動や経営・事業活動のこと。
  3. パリ協定の規制対象である温室効果ガスは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)、六ふっ化硫黄(SF6)、三ふっ化窒素(NF3)である。
  4. Bloomberg NEF. “Global Low-Carbon Energy Technology Investment Surges Past $1 Trillion for the First Time”. 2023-01-26. https://about.bnef.com/blog/global-low-carbon-energy-technology-investment-surges-past-1-trillion-for-the-first-time/, (参照 2024-03-27)
  5. EU MAG. “脱炭素と経済成長の両立を図る「欧州グリーンディール」”. 2020年2月18日. EU MAG Vol. 77. (2020年01・02月号). https://eumag.jp/behind/d0220/. (参照2024-03-27)
  6. GX実現会議. “GX 実現に向けた基本方針~今後 10 年を見据えたロードマップ~”. 閣議決定. 2023年2月10日. https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/pdf/kihon_gaiyou.pdf. (参照2024-03-27)