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- 2023.12.19
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GX実現に向けた150兆円の巨額投資が動きだした #4省エネルギー
省エネルギーの必要性
省エネルギーとは使用するエネルギー量を節約することです。省エネを実践すると、まずはコスト削減ができますし、カーボンニュートラルの観点からもエネルギー全体の使用量を削減し、温室効果ガスの発生量を抑制することができます。また、化石燃料への依存度が高い現状では、化石燃料の可採年数は石油や天然ガスでは50年程と言われており、将来的な安定供給確保のためにも非常に重要です。
エネルギー消費の現状
前回までも見てきた最終エネルギー消費比率ですが、第三次産業(17%)と家庭(15%)を合わせると32%となっており、この分野については省エネ対応が特に効果的です。
第三次産業でのエネルギー消費は、動力・照明(44%)、冷暖房(31%)、給湯(14%)の使用割合になっています。家庭用では、動力・照明(33%)、冷暖房(29%)、給湯(28%)となっています。「動力・照明」には家電機器等が含まれており、IT機器などの普及によりこの用途の使用量が多くなっています。
2030年に向けた目標
まずは、エネルギー効率の高い住宅・建築物による省エネ性能確保の実現を目指し、約14兆円の投資を実施します。新築ではZEH・ZEB水準の省エネ性能確保、既設では省エネリフォームを拡大し、断熱窓等の普及拡大を目指しています。また、省エネ性能の高い次世代半導体の日本国内での生産拡大、省エネ性能の高いデータセンター普及などに約12兆円の投資を実施します。
住宅・建築物
建築物省エネ法に基づく省エネ基準(省エネルギー基準)が、建築物のエネルギー性能を評価する基準として定められています。省エネ基準は2つの基準から構成され、空調、換気、照明、給湯、昇降機、事務機器・家電などのエネルギー消費量から太陽光発電などによる創エネ量を引いた値が基準値以下となることとした「一次エネルギー消費量基準」と、外皮(外壁、窓等)の表面積あたりの熱の損失量が基準値以下となることとした「外皮基準」があります。2023年時点では省エネ基準の適合は一部の非住宅のみ義務化とされていますが、2025年以降に建てられる建築物は省エネ基準の適合基準を満たすことが義務化されます。
効率の良い空調設備、LED照明の設置、ヒートポンプなどの高効率給湯、そして建物への太陽光発電設備の設置などが「一次エネルギー消費量基準」を満たすために必要になります。太陽光発電等の創エネと年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロになる家を「ZEH」、ビルを「ZEB」と呼び、このレベルの実現を目指しています。
また「外皮基準」を満たすために、外張り断熱、内張り断熱、窓断熱の断熱需要が2025年以降一段と高まります。より性能が高い断熱材や断熱窓の建材の開発も期待されます。
省エネ型機器への買い替え
第三次産業と家庭用で使用しているエネルギーでは冷暖房が約3割を占めています。近年のエアコンは「エコ自動機能」等の技術により、10年前と比較して約10%エネルギー消費効率が向上しています。その他の家電も大幅に省エネ効率が向上しており、最新家電への買い替えにより消費エネルギーを抑えることができます。省エネ家電等への買い替え支援の取り組みは、各自治体によって推進されており、今回の投資の中でも取組みへの後押しが組み込まれています。各自治体によって取組みが異なりますので、詳細はお住いの各自治体にご確認ください。
次世代半導体
エネルギー使用比率が一番多い「動力・照明」ですが、その中でもIT機器などの消費割合が近年大きくなっています。そんなIT機器の省エネを進める上でカギとなるのが半導体です。2023年現在の最先端半導体である3nm(ナノメートル:ナノは10億分の1)チップと次世代半導体と目される2nmチップでは、演算性能は約15%向上するが、消費電力は約30%削減できると見込まれています。国内での2nmの半導体の製造に向け2022年8月に新会社ラピダスを設立し、2027年頃からの量産化を目指しています。
さらにNTTでは半導体チップ内の通信を電気ではなく光で行う光電融合技術についても技術開発が進められており、実用化すれば省エネ効果も飛躍的に高まると期待されています。
第4回目となる今回は「省エネ」について見てきました。
最終回となる次回は「CCUS」その他についてみていきたいと思います。
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