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- 2023.12.12
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GX実現に向けた150兆円の巨額投資が動きだした #2電力の備蓄
電力備蓄の現状
第1回では、今後、再生可能エネルギーへのシフトが進むことについて見てきました。
太陽光や風力などの自然の力による発電は、天候などに左右されるため発電量が不安定なことが弱点です。弱点克服のためには、余力があるときに発電した電力を蓄えておく設備が必要で、そのためには蓄電池が必要です。また電気自動車に搭載する蓄電池、家庭用太陽光発電などの電気を貯める家庭用蓄電池などについても需要が高まっています。さらには、スマートフォンやIT機器はもちろんのこと、家電やおもちゃなどにもバッテリーが搭載され、私たちの生活とは切っても切れない状況になっており、今後はさらに需要が増加していくことが確実です。蓄電池の市場は2050年には約100兆円規模になるとの予測もあり、大いに成長が期待される分野です。第2回の今回は「蓄電」について見ていきます。
蓄電池の充電式電池(二次電池)にはいくつか種類があり、それぞれ下記のような特徴があります。
種類 | 特徴 |
---|---|
リチウムイオン電池 | EV車、スマートフォン、家庭用蓄電池などに使用価格は高めだが、エネルギー効率が非常に高く寿命も長い |
ニッケル水素電池 | ハイブリッド車のバッテリー、鉄道システム用地上蓄電設備(BPS)などで使用過充電・放電などにも強く安全性は高いが、寿命が5年程度と短い |
鉛蓄電池 | ガソリン車のバッテリーなどで使用低価格で安全性も高いが、寿命が短くエネルギー効率も低い |
NAS蓄電池 | 工場などの大規模施設で使用低価格で大容量、長寿命だが300℃程度の温度環境でないと使用できない |
現在の主力はリチウムイオン電池です。この市場で日本は2015年時点では優位にいましたが、2020年時点では残念ながら大きくシェアを減らし、中国、韓国に引き離されてしまっています。
2030年にむけた目標
2030年までに、現在約20GWhの蓄電池の国内製造基盤を、150GWhまで約7.5倍に引き上げる目標を掲げ、約4兆円の集中投資を行う方針を打ち出しています。また、次世代技術の研究開発についても約3兆円の投資を予定しており、2030年頃の全個体電池の本格実用化、さらなる革新型電池の2030年代中盤以降での実用化を目指しています。
リチウムイオン電池
現在、次世代技術の研究開発は精力的に進められていますが、当面はリチウムイオン電池が主流になると見られています。リチウムイオン電池は旭化成の吉野彰氏らにより基本技術が確立され、2019年にはノーベル化学賞を受賞するなど、技術面では日本が大きくリードしています。
原材料としては主にリチウム、炭素、マンガン、ニッケル、コバルトなどが使用され、カドミウムや鉛、水銀などの有害な物質を使用しないことから、環境負荷も低いと言われています。しかし、それらの原材料は日本には乏しく、埋蔵量は特定の国に偏在しており、また生産・精錬についても海外に依存しています。まずは希少な金属資源である原材料の確保、そして生産・精錬工程基盤を日本国内に確立するため、製造工場への集中投資が行われます。
リサイクル技術
小型リチウムイオン電池は、電池メーカーや機器メーカーなどによる回収が行われています。今後はそれに加え、EV車の車載用リチウムイオン電池などのリサイクルが必要になります。回収されたリチウムイオン電池は熱処理・分離等の工程を経て再資源化されますが、技術的にはコストや品質面等にまだまだ課題があり開発途上にあるようです。コバルトやニッケルといった希少金属は、今後の需要拡大に伴い材料の逼迫・価格高騰なども懸念されますので、確実な回収技術の確立が急務です。
次世代蓄電池
次世代の蓄電池としていくつか研究開発が進められていますが、大きく期待されているのが「全個体リチウムイオン電池」です。従来のリチウムイオン電池は液体の電解液を使用しており、これを個体に置き換えるのが特徴で、安全性が高く、エネルギー密度の向上による航続距離の向上、充電時間の短縮などが期待されます。特にEV車向けの開発が先行しており、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなどの自動車メーカーが開発を進めています。
他にも「半固体電池」「ナトリウムイオン電池」「フッ化物電池」「亜鉛負極電池」などの技術が、実用化に向け研究・開発が進められています。
水素・アンモニア
使用してもCO2を発生しない次世代のエネルギーとして期待される水素は、燃料としても利用されますが、多くの用途で「燃料電池」として電気と熱を発生させ利用されます。発電のエネルギー源として利用される水素は、電気エネルギーを蓄え持ち運ぶことができる蓄電池の一種としても見ることができます。再生可能エネルギーで日中などに発生する余剰な電力を使い水素を製造し蓄えることで、電気の効率的な安定供給にも資することが期待されています。しかし、水素は大量輸送が課題となっています。これについては、すでに輸送技術の確立しているアンモニア(NH3)に変換して輸送し、利用する場所で再び水素に戻す手法が研究されています。
水素・アンモニアについて研究開発などに約1兆円、インフラ整備・既存設備の改修に約1兆円、大規模かつ強靭なサプライチェーン構築に約5兆円の、合計約7兆円の投資を見込んでいます。
北九州市でも水素を「つかう・ためる」「はこぶ」「つかう」の観点で、響灘地区、東田地区での実証事業が進められています。
第2回目の今回は「蓄電」について見てきました。
次回は「非化石化」について見ていきたいと思います。
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