今回はCCUS、その他について見ていきたいと思います。CCUS自体はあまり耳なじみのない言葉かもしれません。まずは、軽くその説明から始めたいと思います。

CCUSとは

CCUSは「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、排出されたCO2を回収し有効利用・貯留する取組みです。回収したCO2を地下深い地層に貯留する技術を「CCS」、リサイクル技術を使い有効利用する技術を「CCU」と分けて説明されることもあります。CO2の排出をできる限り低減しても、どうしても発生してしまうCO2を適切に管理することで、2050年カーボンニュートラル実現への貢献が期待されています。

出典:経済産業省「カーボンリサイクルロードマップ」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_recycle_rm/pdf/20230623_01.pdf

回収

CO2回収と言っても主に火力発電所や製鉄所などから排出される濃度の高いCO2と、家庭や車などから排出される濃度の低いCO2があります。また、回収自体にもエネルギーが必要なので、回収するCO2以上のCO2が回収プロセスから排出されては意味がありません。効率の良い回収方法が重要になります。高濃度のCO2は回収しやすく、技術開発も進んでおり、分離回収プラントの建設などが進められています。一方濃度の低いCO2の回収については技術開発が進められているものの、エネルギーやコストにまだまだ課題があり、さらなるイノベーションが必要な状況です。

貯留

CO2を貯留するには、回収したCO2を圧縮し地下深くにある「貯留層」に貯留する必要があります。貯留に適した場所の検討、調査が実施され、2023年6月、経済産業省においてCCS事業7案件がモデル性のある「先進的CCS事業」として選定されました。北海道から九州まで広く選定され、2030年までに合計で年間600から1,200万トンのCO2を貯留することを目標としています。引き続き今後の動向に注目が必要です。

出典:経済産業省「日本のCCS事業への本格始動」
https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230613003/20230613003.html

再利用

CO2を資源として捉え、利用する取組みも進められています。オレフィンやポリカーボネートなどの化学製品、合成メタンや合成燃料などの燃料、コンクリートやセメントなどの鉱物などへの利用技術の開発・実証が進められており、一部は実用化まで進んでいます。また、藻類にCO2を吸収させバイオ燃料やバイオ樹脂などを精製する研究も進められています。

その他のエリア

ここまで再エネ、蓄電、非化石化、省エネ、CCUSの5つのキーワードをベースに見てきました。「GX実現に向けた基本方針」では、このキーワード以外の部分もありますので、いくつか列挙します。

原子力発電電源構成比を2020年4%から2030年20%~22%に引き上げ
安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の建設・建て替え など
系統整備全国規模での整備計画に基づいた系統整備、海底直送送電の整備
北海道から海底直送送電の整備 など
資源循環中長期的な資源循環市場の創出を支援する制度導入
デジタル技術を活用した情報流通プラットフォームによる循環度やCO2排出量の測定・開示 など
バイオものづくり公共調達でのバイオ製品利用促進
バイオ製品利用へのインセンティブ付与 など
食料・農林水産業みどりの食料システム戦略、みどりの食料システム法に基づいた施策
森林由来の素材を活かしたイノベーションの推進

他にも新たな金融手法や国際展開戦略、人材育成などについての記載もあります。

まとめ

繰り返しになりますが、GXの目的は「カーボンニュートラルの実現」と「産業競争力の強化」の同時実現です。今回の巨額投資の対象エリアにはビジネスチャンスが広がっていますし、また、一つのイノベーションで世界のトップランナーになり得るエリアでもあります。今後はGXに着手していない場合は逆に、資金調達や取引競争で不利に働く可能性もあります。

©teitan&black-teitan,City of Kitakyushu

地球環境へ貢献しながら、コスト削減、企業ブランド価値向上、ビジネスモデル変革による企業成長を図れるGXはチャンスです。経営者の方は自社の業務計画に、投資家の方は投資先の選定に、学生さんなどは就職先選びに、GXについて参考にされてみてはいかがでしょうか?

最後に、GXはチャンスです。チャンスをつかみ取りましょう!

カーボンニュートラルの時代へ、いち早く備えましょう!