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- 2024.12.2
- GX解説
COP29:資金(ファイナンス)のCOP
11月11日から24日にかけて、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第29回締約国会合(COP29)/パリ協定第6回締約国会合(CMA6)が、アゼルバイジャン共和国の首都バクーで開催されました。COPは気候変動に関する国際交渉の場であり、毎年この時期に開催されています。最近では非国家主体(※1)の参加も増え、気候変動対策の巨大な見本市にもなっています。
前回のCOP28では、気候変動対策の進捗状況を確認するグローバル・ストックテイクの結果を踏まえてパリ協定「1.5℃目標(※2)」の達成に向けた具体的な方策が話し合われましたが、COP29ではその実施手段である資金が中心議題となりました。198か国・機関もの締約国がある中で、どこが・どれだけ・どのように資金を負担するのか。国際交渉が一筋縄ではいかないことは想像に難くなく、会期を2日間も延長した末に「バクー・ファイナンス・ゴール(BFG)」の合意に至りました。金額としての合意内容は以下の通りです。
2035年までに官民合わせて年間1.3兆ドル(約200兆円)の気候変動対策資金を開発途上国に振り向けるという新たな目標に合意。これには先進国が主導する年間3000億ドル(約46兆円)という目標も含まれる。(※3に該当部分の原文あり)
UNFCCCの基本原則には「共通だが差異ある責任」があります。これまで気候変動の原因である温室効果ガスを排出しながら発展してきた先進国が責任を負うべきという考え方で、今回の交渉の前段として、先進国が開発途上国に対して2025年までに年間1000億ドルという資金を拠出するという目標がありましたが、今後10年の目標として3倍に引き上げられたことになります。
一方、大枠の年間1.3兆ドルでは、先進国に限らず、あらゆる主体に拠出を求める形となっています。その中身として、交渉の段階では先進国内の気候変動対策を含めるような案も出ていましたが、今回は見送られ、開発途上国支援として合意されました。
日本は先進国として、また、世界で5番目に多く温室効果ガスを排出する国(2021年度実績)として、資金拠出を求められる立場にあります。この資金には、政府開発援助(ODA)や二国間クレジット制度(JCM)などを通じて日本のソリューションを展開するような事業費も含まれますので、脱炭素に資するソリューションを持つ企業であれば、こういったスキームを活用する形で海外へのビジネス展開に繋げられる可能性があります。
北九州市では、市内の企業のGX経営を支援する他、海外展開を考える企業に対する支援も「アジアカーボンニュートラルセンター」(※4)を核として行っています。国際的にも脱炭素の市場が広がる中、北九州市を足掛かりに海外展開を検討するのも良いのではないでしょうか。
最後に、IGESは、12月6日(金)の15時からオンラインで「COP29速報セミナー」を開催します。COP29に参加した研究員から、資金の交渉をはじめとした色んな議題の報告がありますので、IGESウェブサイト(https://www.iges.or.jp/jp/events/20241206)から参加登録の上、是非ご視聴ください。
※1 国家主体(各国政府)以外のことで、企業、金融機関、学術機関、NGO、などのことをいう
※2 産業革命前と比べて地球表面の気温上昇を1.5℃未満に押さえるという目標。COP26(2021年)のグラスゴー気候合意で「2℃目標」から「1.5℃目標」を目指すことになった。なお、この目標の達成に向けては、今世紀後半までにカーボンニュートラル(脱炭素)社会を実現する必要がある。
※3 「気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)」から抜粋:
The Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties to the Paris Agreement, …
7. Calls on all actors to work together to enable the scaling up of financing to developing country Parties for climate action from all public and private sources to at least USD 1.3 trillion per year by 2035;
8. Reaffirms, in this context, Article 9 of the Paris Agreement and decides to set a goal, in extension of the goal referred to in paragraph 53 of decision 1/CP.21, with developed country Parties taking the lead, of at least USD 300 billion per year by 2035 for developing
country Parties for climate action:
(a) From a wide variety of sources, public and private, bilateral and multilateral, including alternative sources;
(b) In the context of meaningful and ambitious mitigation and adaptation action, and transparency in implementation;
(c) Recognizing the voluntary intention of Parties to count all climate-related outflows from and climate-related finance mobilized by multilateral development banks towards achievement of the goal set forth in this paragraph;
出所: Decision -/CMA.6 Matters relating to finance New collective quantified goal on climate finance (Advance unedited version)(https://unfccc.int/sites/default/files/resource/CMA%2011%28a%29_NCQG.pdf)
※4 アジアカーボンニュートラルセンター(KCN)(https://asiangreencamp.net/)