資金に注目が集まったCOP29(CMA6)では、パリ協定第6条の完全運用化を実現したことも話題となりました。

パリ協定の締約国は、今世紀後半までにカーボンニュートラル社会を実現するために、自らの温室効果ガスの排出削減目標(NDC)を定め、気候変動対策を進めています。締約国は国内での対策を基本としながらも、国際協力により他国で実現した排出削減であって国際的に移転される緩和成果(ITMOs)(以下「クレジット」という。)も、自国のNDC達成に用いることができます。今回、長年にわたる交渉の末、国際協力を規定するパリ協定第6条のルールの詳細が決まったことで、締約国はより効果的で追加的な対策を行う環境が整備されたことになります。

※決定事項の詳細については、環境省・経産省・A6IPの12月6日付けの資料「COP29(CMA6)におけるパリ協定第6条の完全運用化の実現について」(https://x.gd/lpjQs)をご確認ください。

パリ協定第6条の下でクレジットを生み出し、分配・移転する枠組みは多様で、日本政府が主導する二国間クレジット制度(JCM)のような二国間の取り組み、国連が管理する多国間のメカニズム、民間主体のクレジット制度などがあります。このような取り組みは第6条2項で規定されており、協力的アプローチと呼ばれます。一方で、第6条8項では持続可能な開発のための緩和、適応、資金、技術移転、能力構築の全てに関連する枠組みが規定されており、クレジットの分配移転を伴わない活動が対象になっています。

いずれの枠組みにおいても、プロジェクトの開発・実施、排出削減量の測定・報告・検証、クレジットの創出・活用などといった一連のプロセスにおいて民間企業のより一層の参画が期待されています。民間企業にとっては、こういった枠組みを活用しながら国際貢献と海外への事業展開を同時に推進できることや、クレジットを獲得して自社の気候変動対策計画の目標達成や国内の関連規制の遵守に活用することなどがメリットとして考えられます。