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- 2025.6.20
- GX入門
第5次産業革命とは?
現在、第4次産業革命のまっただなかにあると言われています。
ですが早くも、世の中は第5次産業革命に向かって動き始めているそうです。
今回は第5次産業革命について少し解説したいと思いますが、その前にこれまでの産業革命について整理してみましょう。
第1次産業革命
第1次産業革命は18世紀半ばから19世紀にかけて起こりました。
石炭燃料を用いた軽工業(おもに繊維業)の機械化・自動化が発明され、蒸気機関の開発による鉄道、蒸気船などの交通革命も起こりました。
この時期の主なイノベーションは以下のようなものがあります。
1776年 ジェームズ・ワットが最初の業務用蒸気機関を完成
1785年 エドモンド・カートライトが蒸気機関を動力にした力織機を発明
1791年 二コラ・ルブランが炭酸ナトリウムの大量生産法を発明、ガラスの増産
1792年 ウィリアム・マードックがガス灯を発明
1804年 リチャード・トレビシックが蒸気機関車を発明
1807年 ロバート・フルトンが外輪船(蒸気船)を実用化
1816年 ジョン・マカダムがマカダム舗装を実用化
1824年 ジョセフ・アスプディンがボルトランドセメントを発明
1825年 最初の商用鉄道ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道開通
第2次産業革命
第2次産業革命は19世紀半ば~第一次世界大戦(1914年)までとされています。
石油燃料を用いた重工業の機械化・大量生産化が進みました。
この時期の主なイノベーションは以下のようなものがあります。
1860年 ジャン・ジョセフ・ルノアールがガス・エンジンを商用化
1876年 グラハム・ベルが電話を発明
1877年 トーマス・エジソンが蓄音機を実用化
1879年 エジソンが白熱電球を実用化
1878年 ウイリアム・ジョージ・アームストロングが水力発電所を建設
1882年 トーマス・エジソンが世界初の商用の火力発電所を建設
1908年 ヘンリー・フォードがフォード・モデルTを生産
第3次産業革命
1980年代から始まる、いわゆるデジタル革命が第3次産業革命とされています。
コンピュータやインターネットなどの情報通信技術が発展しました。
この時期の主なイノベーションは以下のようなものがあります。
1945年 ジョン・フォン・ノイマンが現在のコンピュータの原型となるプラグラム内臓方式を提唱
1946年 ジョン・モークリーとJ・プレスパー・エッカートが設計・製作した電子式デジタルコンピュータのENIACが公開
1951年 アメリカのEBR-Iで世界初の原子力発電に成功
1969年 アメリカ国防総省がインターネットの起源になるARPAnetを開発
第4次産業革命
第4次産業革命は2010年代から現在にかけて進んでいるとされています。
AI、クラウド、ブロックチェーン、量子コンピュータなどにより、生産活動を自動化・効率化する動きが進められています。
この時期の主なイノベーションは以下のようなものがあります。
2008年 サトシ・ナカモトによってビットコインを発明
2011年 世界初の商用量子コンピュータ「D-Wave One」発表
2022年 OpenAIがChatGPTを一般公開
第5次産業革命
さて、第5次産業革命です。
新たな産業革命として、これまでの課題を解決するべく3つのキーコンセプトが据えられています。
・サステナビリティ(持続可能性)
・ヒューマンセントリック(人間中心)
・レジリエンス(回復力)
まず「サステナビリティ」として、地球環境の保全と企業活動の持続的な発展の両立を目指します。まさにGXですね。
過剰な資源の採掘や森林伐採などは避け、廃棄物の削減、材料の再利用、再生可能エネルギーの活用などなど、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを推進しします。
次の「ヒューマンセントリック」は人々の権利を尊重し、ニーズを満たしつつ、利益の最大化を目指す概念です。
従来の産業用ロボットと人間は、安全柵などで隔たれた物理的な距離をとったうえで稼働することが一般的でした。人間は産業用ロボットが効率良く稼働するために働き、これでは「人間中心」とは言い難い状況です。人とロボットが同じ場所で「協働」で作業を行い、作業効率や生産性を向上させ、利益を最大化することを目指しています。
「レジリエンス」は自然災害やパンデミック、戦争といった壊滅的な変化に直面したときに、産業や人々の生活を守り回復する力を表す概念です。
新型コロナウイルスの感染が拡大した際に、接触の機会を減らすために、IT技術を活用した非対面のサービスが急速に発展しました。製造業でもデジタルツインの活用も広がっています。
このように、デジタル技術を駆使して、危機への柔軟な対応力を獲得することが強く意識されています。
これまでの産業革命でも、カギになる重要な発明やイノベーションがあったように、第5次産業革命でも大きなイノベーションが期待されます。
日本でも内閣府による「ムーンショット型研究開発制度」で、以下10の目標が掲げられプロジェクトが進行しています。
・目標1:身体、脳、空間、時間の制約からの解放
・目標2:疾患の超早期予測・予防
・目標3:自ら学習・行動し人と共生するAIロボット
・目標4:地球環境の再生
・目標5:2050年の食と農
・目標6:誤り耐性型汎用量子コンピュータ
・目標7:健康不安なく100歳まで
・目標8:気象制御による極端風水害の軽減
・目標9:こころのやすらぎや活力を増大
・目標10:フュージョンエネルギーの多面的な活用
いずれも夢の膨らむ目標です。
一日も早い実現と社会実装により「革命」をもたらしてくれることに期待が膨らみます。
第5次産業革命は、これまでの生産性や作業効率の向上に根差した変革とは異なり、現在直面している社会課題を解決するための変革です。産業革命であると同時に社会変革でもあります。豊かな未来のために全体で取り組んでいく必要があります。