GXの実現に向けて、様々な方面からのアプローチが実施されています。
2023年2月に閣議設定された「GX実現に向けた基本方針」でも、『デジタル』分野へ今後10年間で12兆円の投資が予定されており、半導体の研究・開発などが対象になっています。
この「半導体の研究・開発」がどのようにカーボンニュートラルに繋がっていくのか?今ひとつピンと来ていない方も多いのではないでしょうか?少し解説していきたいと思います。

半導体ってなに?

そもそも半導体とは何か?
物質の特性として電気を通す鉄や銅などの「導体」と、電気を通さないゴムやガラスなどの「絶縁体」があります。その「導体」と「絶縁体」の中間の性質を持っているのが「半導体」です。光や熱などの条件によって電気を通したり通さなかったりする性能を利用し、電流の制御などを行います。

半導体の種類

半導体はいくつかの種類に分けられます。ここではパワー半導体とロジック半導体についてご紹介します。

パワー半導体は、大きな電圧や電流の制御・変換を行う半導体で、一般的に定格電流が1A(アンペア)以上のものです。エアコン・テレビ・自動車などにも組み込まれており、コンセントに届いた電気を、動作に必要な電圧・周波数に変換したり、直流・交流の電力変換を行ったりするなどの役割を担っています。

一方のロジック半導体は、情報の処理や論理演算・制御を行う半導体で、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器の「頭脳」の役割を担っています。

では、この2種類の半導体はどのようにカーボンニュートラルに繋がっていくのでしょうか?

パワー半導体 × GX

一般的なパワー半導体はシリコン(Si)で作られていますが、今のままでは製品の小型化や、電力変換時のエネルギー損失などの面での性能が限界に達しつつあると言われています。そこで、これまでのものよりも電気を通しやすく損失が少ない「新素材」を用いた、次世代パワー半導体の研究・開発が進められています。

次世代パワー半導体に用いられる「新素材」としては、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などが代表的です。これらの素材は従来のシリコンよりも耐電圧が高く、高耐電圧の材料を使うことで、安全性・信頼性が高く、高電圧での動作が可能な半導体を作ることができます。また、次世代パワー半導体は電力変換時の損失も小さいため、エネルギーのロスを減らし省エネにつながります。

EV(電気自動車)は今後のカーボンニュートラル実現に向けて期待される分野ですが、次世代パワー半導体はEVの性能向上に大いに寄与します。安全・安心面はもちろんのこと、軽量かつ高効率なインバーター装置が実現すると、1回の充電で走行できる距離が延長されます。また、より高電圧での急速充電器への適用も挙げられます。また、エアコン・テレビなどの家電に対する省エネ効率も、今後さらに求められますので、その分野でも次世代パワー半導体への期待は大きいです。

ロジック半導体 × GX

昨今、メディアなどで「2nm(ナノ)」などのキーワードを聞くかと思います。この「ナノ」は半導体回路の線幅を表しています。ロジック半導体ではこの回路の線幅を小さくして集積率を高めることが進化の歴史です。現時点では3nmプロセスが最小で、最新のiPhone15 Proなどに搭載されています。2nmプロセスの試作はすでに2021年にIBMで成功しており、これを受けて2022年11月に「Rapidus(ラピダス)」という新会社を日本企業が合同出資で設立し、生産に向けて動き出しています。

それではこの「ナノ」が小さければ何が良いのか?という話ですが、簡単に言うと、回路を構成する線幅が狭ければ狭いほど、処理が高速かつ消費電力が少ない半導体が作れるからです。少ない電力で高性能ですからいいことずくめですね。IBMによれば、2020年頃に登場した7nmプロセスと比べると、2nmプロセスでは演算能力を45%向上させつつ、消費電力は75%削減する効果があるということです。

カーボンニュートラル実現に向けて、消費電力の削減への貢献はもちろんですが、近年ではAI技術の発展やIoTデバイスの増加など急速なデジタル化が進み、データセンターなどに対する処理能力向上のニーズも急増していますので、実現に向けて期待は高まるばかりです。

ちなみに1nmは1メートルの10億分の1で、髪の毛1本の太さの約10万分の1に相当する大きさだそうです。すごく小さいという事だけはわかりますが、正直よくわかりませんね。

まとめ

いかがでしょう?
「半導体の研究・開発」がどのようにカーボンニュートラルに繋がっていくのか、少しはお役に立てたでしょうか?今回ご紹介したもの以外にも、半導体についてはいくつもの研究・開発が実施されています。また、半導体設計の分野でも人材不足が問題になっているようです。
カーボンニュートラル実現と産業競争力の強化のために、半導体は確実にGXのキーワードの一つと言えそうです。