近年ますます注目を集めている「インパクト投資(ファイナンス)」について解説します。
まずは、インパクト投資の定義ですが、2024年3月に金融庁から発表された資料では下記のように記載されています。

通常の投資と同じく投資に伴う”リスク”からの”リターン”を確保しつつ、新しい3つ目の軸として世の中の課題を解決する”インパクト”を評価基準にいれた投資です。要は金銭的な投資効果はもちろん、同時に社会課題も解決するための投資ということです。

4つの基本的要素

インパクト投資は次の4つの基本的要素にまとめられます。

投資の実施により、当該投資がなかった場合と比べて、投資先の企業・事業がより大きな効果を具体的に創出し貢献することが必要です。
そのためには資金面以外にも、事業性を改善するアドバイスを投資家から提供するといった支援も含めることができるとされています。

・基本的要素3:効果の「特定・測定・管理」を行うこと(identification / measurement / management)

投資の実施後には、具体的な効果が出たか継続的に測定・管理することが必要です。
そのためには投資の前に、投資先の企業・事業がもたらす効果とその道筋を特定し、効果を測定するための定量的又は定性的な指標を特定しておくことが重要になります。
投資家と事業者は継続的に対話を行い、状況によっては投資や効果範囲の拡大なども見据えた対応が必要です。

・基本的要素4:市場や顧客に変革をもたらし又は加速し得るよう支援すること(innovation/transformation/acceleration)

投資家は、投資先の企業・事業が具体的な効果をより多く創出するように、特性・優位性を見出し支援していく必要があります。
一般的に社会課題の解決には時間がかかるため、中長期的な視座をもって、投資先の事業がインパクトを実現し、これをどう価値向上につなげるか、投資家・事業者が対話を通し、創意工夫等を促していくことが重要です。

出典:金融庁「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針の概要」
https://www.fsa.go.jp/singi/impact/siryou/20240329/04.pdf

インパクト投資とESG投資の違い

インパクト投資と似たような投資としてESG投資があります。両方とも社会的な課題を念頭においた投資ですが、違いがあります。

ESG投資は、その名の通りEnvironment(環境)Social(社会)Governance(統治)の3項目に対する企業の対応を評価する投資手法です。評価対象はあくまで「企業のESGへの取り組み」で投資比率等を決定したり、投資先から除外したりします。
一方のインパクト投資は、社会的な課題解決そのものを目的とする投資手法です。投資対象の企業・事業が提供する製品やサービスにより、社会的な課題を解決する効果を評価・測定するのが特徴です。

出典:金融庁「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針の概要」
https://www.fsa.go.jp/singi/impact/siryou/20240329/04.pdf

まとめ

カーボンニュートラルなどの社会的な課題の解決に、インパクト投資は非常に有効な手段の一つです。
まだまだ課題はあるようですが、うまく好循環に乗せることができれば、いいことずくめです。
投資家としては、社会課題の解決に向き合う事業者へのニーズに対応し、共に推進することで収益性を高めることができます。
事象者としては、事業の推進への資金およびアドバイスが得られ、目的の実現への道が開けます。
社会としては、より良い世の中が実現できます。
市場規模も年々増加しているようですし、これからの社会に必要不可欠な投資活動になると思います。