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株式会社正興電機製作所 古賀事業所外観(提供:株式会社正興電機製作所)

 福岡市を代表する製造業の正興電機製作所が、北九州市への進出を決めました。2026年4月をめどに同市若松区の北九州学術研究都市に「ひびきの研究開発センター(仮称)」を開設、蓄電システムなどグリーントランスフォーメーション(GX)関連技術の研究を始めます。
 同社執行役員山﨑忠照古賀事業所長に進出の狙いなどを聞きました。

北九州は次世代製品の研究開発拠点

執行役員山﨑忠照古賀事業所長

ーー創業100年を超える老舗企業ですが、GXの取り組みも古いのでしょうか。

 発電所の監視制御システムを本業とする当社ですから、脱炭素の取り組みは20年ほど前から行っています。当時は国連の持続可能な開発目標(SDGs)やDXという言葉はなく苦労もありました。最近は世界中でデジタル化や脱炭素化の取り組みが大きく進み始めました。当社も2021年度に「サステナビリティ経営」を基本方針に据えた5カ年の中期経営計画「SEIKO IC2026」を策定し、最新のデジタル技術を活用した社会課題解決や、脱炭素社会実現に本格的に取り組む方針を打ち出しました。今はまだ手探りですが、事業活動を通じた社会課題解決でサステナブル社会の実現に本格的に乗り出したところです。

ーー具体的な取り組みを教えて下さい。

 化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動を事業活動として捉えています。エネルギーの大元は電気ですから、太陽光・風力・水力といった再生可能エネルギーを利用した発電による事業所内のエネルギー利用のハイブリッド化検証。また再生可能エネルギーと蓄電池を連携させて効率の良い運転をサポートするエネルギーマネジメントシステム(EMS)にも取り組んでいます。

ーー10月に研究開発拠点となる「ひびきの研究開発センター」を、北九州市若松区の北九州学術研究都市に2026年4月開設と発表しました。

 北九州市への進出は初めてとなりますが、ひびきのでは最先端のモノづくりである蓄電池や人工知能(AI)、ロボットシステムの研究開発に力を入れます。当初、90名(研究開発50名、製造40名)でスタート、開設後、段階的に50名程度の現地採用・学生採用を積極的に行い、5年後は総勢で200名を計画しています。次世代の蓄電池「レドックスフロー電池」を利用した電力需給制御システムを開発予定です。またAI技術を使って設備遠隔監視などのスマート保安システムの実証実験なども始めます。
 古賀事業所は引き続きリチウムイオン電池を用いた蓄電システムの研究開発を続けますが、ひびきのは次世代製品の研究開発拠点にするつもりです。

ひびきの研究開発センター(完成予想図)(提供:株式会社正興電機製作所)

産学官連携が成否のカギ

ーー北九州市への進出には何か理由があるのでしょうか。

 行政が誘致活動に熱心だったというのもありますが、学研都市には北九州市立大学、九州工業大学、早稲田大学といった学術機関が多く立地しています。モノづくりの街として中堅・大企業も多く、人材も豊富です。また、北九州市は大規模な洋上風力発電の拠点化を進めており、自動車関連産業が蓄電池生産を計画するなど、エネルギーの拠点都市として成長する可能性を秘めています。GXは社会貢献ではありません。最終的には利益を生む魅力ある技術や製品が求められますし、そういった製品を10年、20年後に北九州市で生み出すことができれば嬉しいです。

ーー課題を教えて下さい。

 長年当社のコア事業に携わってきた従業員に、今からGXを意識付けさせるのは大変です。一方で、ひびきのにはGXに関連した研究室を持つ大学や企業が多くあります。この地で一から教育した社員が、北九州市や北九州産業学術推進機構(FAIS)が主導する北九州GX推進コンソーシアムを通じて地域や地場企業とどう連携できるのか。その成否が課題と考えています。

企業概要

 1921年(大正10)創業。東京証券取引所プライム市場に株式を上場する電機機器メーカー。「最良の製品・サービスを以て社会に貢献す」を社是に、サステナビリティ経営を基本方針に置く。電力を安定供給する変電所や上下水処理場の監視制御システムのほか、全国の高速道路の受変電設備シェアは日本一を誇る。23年度連結売上高は270億円。
 近年は保安業務のDX化(スマート保安)にも積極的に業容を拡大、GXの中核として蓄電システムを強化中。

太陽光連携蓄電システム(提供:株式会社正興電機製作所)