住宅や自動車、飲・食料品にスマートフォン。現代社会には大量のガラスが溢れています。北九州エコタウンに処理工場を持つ西日本ガラスリサイクルセンター(北九州市小倉北区)は、ガラスメーカーから出る余剰ガラスや、廃棄・埋め立て処分される廃ガラスを高品質のカレット(原料屑)に再生し、新たな原料としてガラス溶融メーカーに供給することで循環型社会に貢献しています。ガラス製品の製造時に原料1トンをカレットに置き換えた場合、CO(二酸化炭素)排出量は0.7トン削減できるといいます。飯室聖二社長に取り組みや課題を聞きました。

 製造と再生のハイブリッド

ーーガラスカレットとはどのようなものでしょうか。

   代表取締役 
   飯室 聖二氏

破砕屑といえば分かりやすいでしょうか。木材はチップ、プラスチックはペレット、ガラスはカレットと呼びます。当社は板ガラスメーカーで発生する余剰ガラスを購入し、破砕選別工程を通じてカレットを製造しています。カレットは板ガラスだけでなく、グラスウール繊維などの原料としても各ガラス製品メーカーへ販売しています。また事業活動から発生する廃ガラスのリサイクルカレット化も行っており、製造業とリサイクル業のハイブリッド企業といえます。

           ガラスくずはサイズごとに分けられて保管

ーー貴社のGXの取り組みを教えて下さい。

 最適なリサイクルを行うため、響工場内には6つの処理ラインを備えています。単一ラインや複数ラインを組み合わせて運用することで、処理が難しい搬入品も100%水平リサイクルを実現しています。ガラスの組成を生かすためにカレットを混合し、各ガラス溶融メーカーの仕様に合わせることもできます。ほかにも封止材やフィルムなどの異物が付着したカレットをレーザーで識別、エアーで選別する光学識別機を導入しているほか、AI(人工知能)やロボットといった先進技術も取り入れており、人だけでは難しい太陽光発電パネルなど高機能で処理が難しい廃ガラス素材にも対応しています。ガラスリサイクルは埋め立てと比べると88%のCO排出削減が可能と言われています。リサイクルを通じた脱炭素社会の取り組みを引き続き進めていきます。

 YouTube通じて意識啓発

ーー飯室社長は自社を「カレット問屋」と表現しています。

 廃棄ガラスをリサイクルするだけでなく、組成を生かし、鉄鋼やろ過砂といった他素材の副資材としてカレット利用の研究をしており、すでに舗装材として使用実績もあります。またカレットリサイクルネットワークによるアジア圏での輸出入を積極的に行っており、国際交流の輪を広げています。カレット事業によってCO排出削減、バージン原料使用抑制による地球資源の保護、カーボンニュートラルの実現なども目指しています。

異物の選別は手作業でも行われている  破砕、選別を経てカレットとなる

ーーGX推進について課題を教えて下さい。

 業務において大きな課題は感じていません。2000年を境に社会にリサイクル(3R)が本格的に浸透し始め、今ではその思想やかかるコストも広く理解してもらえるようになりました。それでもまだ取組に対して事業費の持ち出しなどが多く発生すると、価格を理由に二の足を踏む人は多くいます。SDGs(持続可能な開発目標)やGXが当たり前になり取り組み企業も増えましたが、実際はほとんどがパフォーマンスに過ぎず、真剣に向き合っている企業はまだまだ少ないのが現状です。当社は2017年に環境省が策定したマネジメントシステム「エコアクション21」の認証を取得して以降、社内外で意識啓発を進めてきました。リサイクル普及のため動画配信サイトYouTube向け動画制作も行いました。

ーー北九州GX推進コンソーシアムに参加して良かったこと、また期待を教えて下さい。

 FAISのGX推進補助事業に昨年度から連続で採択いただき、昨年度は動画制作、本年度は識別機の新規設備投資に活用させていただきました。今後も連携してリサイクルとカレットの認知度や可能性向上に努力していきたいです。

企業概要

㈱西日本ガラスリサイクルセンター響工場
(提供:㈱西日本ガラスリサイクルセンター)

 2011年(平成23年)設立。飯室聖二社長の祖父が1959年(昭和34)に創業した飯室商店(神奈川県綾瀬市)が、九州のリサイクル業務を担う目的で開設した。最大の特徴はガラスの組成に応じてカレットをブレンドし、原料メーカーに納品できる点にある。アジア各国とも連携して輸出入業務にも力を入れている。2024年度の処理量14,000トン。 
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